腱板断裂は腱板の退行性変化によって中高年に好発し、肩の痛みや筋力低下を主訴とする運動器疾患です。

腱板断裂の治療法は、理学療法を中心とした保存療法と鏡視下腱板縫合術、陳旧性広範囲腱板断裂や脂肪変性が進行している重症例の場合は人工関節といった手術療法が主となっています。

近年では、腱板が断裂をしていても症状が出現しない無症候性腱板断裂の存在が報告され、腱板断裂自体が必ずしも疼痛を引き起こすわけではないことが広く認知されています。

このため、保存療法では症候性の腱板断裂を無症候へ変化させることが理学療法の大きな目的になってきます。

無症候性腱板断裂が症候化する要因は、腱板断裂の大きさ、腱板筋萎縮や脂肪変性、喫煙などが報告されています。また腱板機能低下や腱板断裂拡大によって骨頭の動的求心性の低下が報告されている点や上腕骨頭が上方に偏位し、肩峰下に衝突する肩峰下インピンジメントが生じることで有症化することも一因であることが報告されています。

また、肩峰下インピンジメントを引き起こす機能的変化の要因として、後方関節組織のタイトネスは動的構造が短縮することとして定義され、その誘発頻度は高いとされています。

このような肩甲骨に付着するために後方関節包の機能障害は Scapular Dyskinesis の原因となる可能性があり、肩甲骨の機能障害によって変化した運動学的パターンは腱板断裂の進行要因として関連していることが多いとされています。後方関節包のタイトネスは肩関節疾患において頻度の高い機能障害であり、Burkhartらは棘下筋、小円筋、広背筋といった後方部に位置する領域の動的構造が短縮することが問題であると提唱しています。

後方関節包のタイトネスによって、肩峰下に衝突する肩峰下インピンジメントが生じることや、Harrymanらの研究では正常の関節包では肩屈曲時の上腕骨頭の上方偏位が0.35 ± 2.22mm、前方偏位が3.79 ± 3.8mm に対して、後方タイトネスが存在する場合上方偏位が 2.13 ± 1.68mm、前方偏位が 7.27 ± 3.17mmまで増加することが報告されています。

腱板断裂の特徴とされる上腕骨頭が上方偏位する機能障害の一要因として、肩甲上腕関節の後方関節包のタイトネスは理学療法における機能的障害の一つとして対応する根拠となり得るといえるでしょう。

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