現在、末梢神経損傷で軽度運動麻痺がみられるアスリートのトレーニングを行っているので、今日は末梢神経損傷における運動療法について考えていきたいと思います。

末梢神経の効率的な再生には、神経栄養因子やサイトカインなど多くの因子が関与している。

そもそも末梢神経損傷は、牽引・外傷・圧迫・打撲などの物理的作用によるものや熱・電気・放射線などの様々な原因により、損傷を受け運動・感覚麻痺などの機能的な障害が生じた状態のことをいいます。
末梢神経損傷は、支配領域にある骨格筋が部分的な除神経状態となり退行性変成を生じていきます。

神経再生には神経のミエリン鞘とシュワン細胞の補充が肝要とされていて、末梢神経損傷動物モデルを用いては幹細胞やiPS細胞移植による治療効果を検討した報告は多数あり、幹細胞を用いた臨床試験も始まっている状況です。
また、conduit(人工神経鞘)を断端部に連結させる手法においても、その中に自家培養細胞を移植する取り組みが行われています。
更には分子生物学的視点から見たときには、末梢神経の効率的な再生に神経栄養因子やサイトカインなど多くの因子が関与している事が重要であることが報告されています。

末梢神経損傷に対する理学療法は、除神経によって生じる筋萎縮をできる限り予防するために、運動療法・物理療法を行うこと。

末梢神経損傷に対する介入効果としては、運動は神経発芽や再生軸索の成熟を促進し、電気刺激は神経再生を促すという報告もあり、リハビリテーション介入が神経再生を促す可能性がある事も示唆しています。
一般的な末梢神経損傷に対する理学療法は、除神経によって生じる筋萎縮をできる限り予防するために、運動療法・物理療法を行うことです。

実際に神経損傷後にリハビリとして運動療法を行った研究では、損傷した神経線維は損傷部では「Waller変性」に伴い損傷1週までに一旦消失、2週以降に再生軸索として経時的に増加するとされ、運動を行うことでその回復が促進したというように考察されています(まだハッキリ証明されてはいない感じ・・・)。

別のラットによる研究では、ラットの運動機能を観察した結果、神経損傷後運動を行った群が足関節運動機能や歩容の改善を認めたと報告。
この研究では、組織観察からも神経の髄鞘の増加が認められたと報告しています。
神経再生時にはグリアやシュワン細胞、標的組織より神経栄養因子が放出されるほか、神経細胞上の栄養因子受容体の発現も増加して、受容体の下流に位置する多くの細胞内情報伝達系分子群の発現も増加することがわかっています。
また神経細胞死を抑制する過程でも、神経栄養因子、その受容体などが関与している事が明らかとなっています。

しかしながら神経再生に関わる神経栄養因子やサイトカインの多くは、比較的な大きなポリペプチドであり神経実質内への移送系を持っていないこともわかっています。
つまり血行による移送は、血液神経関門によって阻まれているので難しいということ。
現在は、神経周膜に存在する微少血管へ軸索再生に必要な物質を通過させる方法が試みられている段階にあるようです。

運動介入は循環動態を改善させる効果があり、今後研究が進めば神経可塑性に対する運動の効果を明らかにできる可能性があるということがいえるでしょう。

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