骨格筋への電気刺激の効果は、筋力強化、代謝亢進、疼痛軽減、筋緊張軽減など多岐にわたると考えられています。
その中で筋力強化については、大腿四頭筋を対象とする研究が数多く報告されています。
これまでに発表された高齢者を対象としたNMESの介入研究のシステマティックレビューにおいて、NMESによる筋力増強効果は随意的な訓練と同等に有効であることを報告しています。
刺激時間や頻度はさまざまにはなりますが1回20~30分、週3~4回の訓練を8週間実施することで10%程度の筋力増加が得られるとする報告が多いです。

NMESはすでに臨床現場でさまざまな疾患に対して用いられていて、一部の分野ではその有効性が報告されています。
例えば、Jonesらは呼吸器・循環器疾患の低体力者へのNMES効果のレビューを報告していて、全身状態が不良な状態の患者に対してもNMESの筋力増強効果はあると報告しています。(★1)

運動器疾患においても、NMES は大腿四頭筋の筋力強化の目的で用いられることが多いです。
さまざまな運動器疾患で大腿四頭筋の強化は治療成績に寄与することが確立している反面で、NMES による効果についてはエビデンスが確立していないものもあるので注意が必要になります。
TalbotらはNMESによる膝OAへの効果について40%MVICを目標とした刺激の結果、約10%の筋力増強と WOMACスコア(変形性膝関節症の患者立脚型アウトカムスケール)改善の両面で効果ありと報告しています。(★2)
その一方では、Palmieri-Smithはやはり膝OAに対して40%MVIC 以上を目標とした刺激を実施したが、筋力の改善もWOMACスコアの改善も得られなかったと報告しています。(★3)

双方の介入調査の差異としては、OAの重症度、刺激の波形の違いなどが挙げられ、特にTalbotの対象患者のほうが重症例が多かったことが結果の差を生んだと考察されています。
今後さらに質の高い調査が実施されることが期待されますが、十分な刺激強度を加え筋力強化が得られれば、NMES によって膝OAの臨床症状が改善する可能性はあると考えられます。

★1:Jones S, Man WD, Gao W, Higginson IJ, Wilcock A,Maddocks M:Neuromuscular electrical stimulation for muscle weakness in adults with advanceddisease.
★2:Talbot LA, Gaines JM, Ling SM, Metter EJ:Ahome-based protocol of electrical muscle stimulation for quadriceps muscle strength in older adultswith osteoarthritis of the knee.
★3:Palmieri-Smith RM, Thomas AC, KarvonenGutierrez C, Sowers M:A clinical trial of neuromuscular electrical stimulation in improving quadriceps muscle strength and activation among womenwith mild and moderate osteoarthritis.

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