認知運動療法は「脳の再組織化」による運動機能回復を目的する介入方法

イタリアのリハビリテーション医カルロ=ペルフェッティにより提唱されている「認知運動療法」は認知理論に基づく運動療法になります。
認知運動療法は「脳の再組織化」による運動機能回復を目的する考えです。
認知理論では、運動機能回復は脳の認知過程(知覚、注意、記憶、判断、言語)の活性化と密接に関係しており、回復の質は認知過程が正しく組織化されたかにかかっていると考えます。
したがって認知運動療法の特徴は、患者が脳の認知過程を適切に活性化できるように導き、損傷からの広範囲な回復を図ることにあります。

身体を介して世界をいかにして知るのかという脳の認知過程の組織化が大事

認知理論には、「あらゆる運動機能回復を病的状態からの学習とみなし、学習が脳の認知過程の発達に基づいているのであれば、運動療法もまた認知過程の発達に基づいていなければならない」という定義があります。
また認知理論では、「脳の認知過程を活性化することにより、運動機能回復が促進できる」 と仮説づけられています。
この認知理論においては、動作や行為の再獲得は結果であると解釈され、認知運動療法では動作や行為を治療手段として適用しないというのが基本的な考え方となります。
つまり認知(cognition )とは、「知ること〔knowing)」を意味しますが、そうした動作や行為の反復や遂行よりも、患者が身体を介して世界をいかにして知るのかという脳の認知過程の組織化を最重視していきます。

随意運動の認知スキーマを再組織化する

認知理論の世界では筋力増強理論や神経運動学理論が積みあげてきた運動療法の常識がくつがえされることが多くあります。
よく言われますが、脳の認知過程は運動のプランやプログラミングに参加しています。
それゆえ認知理論では、「運動機能回復は筋力増強や反射の促通や抑制といった治療的介入ではなく、学習の基盤である認知過程への治療的介入によって達成される」と解釈されていきます。
認知理論の目的は、脳の認知過程に治療的に介入することにより、随意運動の認知スキーマ(schema;身体と環境との相互作用を意味的に解釈する基本的な知識構造)を再組織化することにあります。
認知運動療法は、各種の動作や行為の練習そのものではなく、各種の動作や行為が遂行できるようになるための中枢神経系の準備状態を作り上げる運動療法なのです。
自分の身体がどこの空間にあるか、身体が何と触れているか、身体が重さを感じ取れるか、運動イメージは可能か。どのように学習するか、思考しているか。
そうした脳の機能システムを改善することが脳機能回復にとって最も大切であり、脳の中の身体に働きかけなければ、運動機能回復は生じないという考え方です。

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