運動制御のキーポイントとなる要素は筋緊張であるともいわれます。

一般的にいう「筋のこわばり」とは、本来あるべきブレーキシステムが機能しない場合において、度々身体がサイドブレーキをかけるような方法をとります。

この本来身体が持つブレーキシステムは運動制御システムとも呼ばれ、入力、処理、正しい出力をするために細かく調整されています。

このシステム内に欠陥が存在する時、例えばですが、動作やコーディネーション、タイミングや対称性のいずれかにおいて機能不全が観察されることが出てきます。

制御され過ぎてしまっている身体

身体は生き残るため、そして身体本来の働きが危険にさらされるような状況下において、ブレーキシステムを作り出すようにセットされているものです。

それは自分に迫りくるトラブルから遠ざけるために常に働き続け、制御をかける傾向にあります。いわばこの制御システムはその他組織の保護や痛みを避ける安全装置として機能しているわけです。

ただこのシステムは、より良い制御を得られるかも知れない反面、同時にエネルギーを浪費して効率性を失うことの可能性をもちます。

要はブレーキを踏まなくてもよい状態なのにブレーキがかかってしまうような、本来はなくてもよい制御がエラーで起こってしまうというもの。

例えるなら、制御され過ぎてしまっている身体ができてしまうともいえるかもしれません。

抑制か、機能不全か

単体の筋や筋群の局所的な抑制は、リハビリにおいて神経性の問題や怪我から来る障害・病気や機能不全として診断されるものです。

しかしながら特に診断名はつかないけれども、微妙で目立たない抑制はおこるもの、そして概ねこれらは姿勢やパターンを遂行するために適度な緊張の度合いを支配する筋の能力不全であることが多いと思われます。

ここでの本当の問題はこの筋のこわばりや弱さを単純に評価した時にそれを筋そのものの問題であると考えがちですが、実はその多くは脳からの指令の問題であることが報告されています。

傷跡や過去の怪我による瘢痕組織まですべての組織にどこか拘縮がある場合、筋は単純にシステム障害から体を保護するために、事前に緊張したり安静時の筋緊張を極端に高めるように指示されます。

この筋緊張はまた他の組織からのシグナルだけでなく既に治ったはずの過去の怪我からも継続して送られてしまうものでもあります。

代償動作が新たな機能不全パターンを構築、そしてそのパターンが本来は不必要な抑制をかけ、結果として原因の見えない機能不全だけが取り残されてしまう。

例えば入力は正しくされていますが痛みを抱えた習慣的な生活習慣が続くと新しい運動パターンが作られ、今度はそれ自体が実際の問題となっているケースが出てきます。

これは言い換えれば、新しい機能不全パターンができてしまったということ。

ある代償動作はストレスを軽減し、ある程度の可動性を維持することができるため機能的なものではありますが、怪我が治り、ストレスを軽減する必要がなくなった時は機能不全運動パターンはそのまま残り、今度はそれが新たな機能不全を生むということはよく見られます。

不必要な筋のこわばりは、乏しい関節可動性、または乏しい組織の伸長性からくる不適切な入力を脳が筋のこわばりと捉えるという防御性緊張の原因となります。

このようなケースは代償動作が新たな機能不全パターンを構築、そしてそのパターンが本来は不必要な抑制をかけ、結果として原因の見えない機能不全だけが取り残されてしまうということになります。

だからこそ、そのパターンが正常なのか、不全パターンなのかを評価することに大きな意味があると考えられます。

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