こんにちは塩出です。今回のテーマは「運動調節の仕組み」についてです。
錐体路と錐体外路系
運動には随意的に行われるものと不随意的に行われるものに分かれ、それぞれ、「随意運動」「不随意運動」と呼ばれることが多いです。随意運動では筋肉を動かそうとすると、大脳皮質第4野にあるベッツ細胞から信号が送られます。その信号が脳幹にある錐体を通り運動ニューロンに達するため、この経路を「錐体路系」と呼びます。
ただし随意運動はこの段階では円滑な動きをすることができません。随意運動は「反射」によって動きが調節され、初めて円滑な動きを遂行することができます。その反射運動を制御するもう一つの経路は「錐体外路系」と呼ばれます。
錐体外路系は大脳皮質の第6野、第8野、中脳・小脳を多くの場所に起点を持ちます。これらが必要となれば運動ニューロンに信号を送り、筋の収縮を強くしたり弱くしたりすることで円滑な運動ができるようになります。
脊髄を介した調節
筋肉や腱の中には、収縮を感知するセンサーの役割をする神経があります。筋中にあるセンサーは筋紡錘とよばれ、筋の収縮力が不足していると察知すると信号を送ります。筋紡錘の神経線維は運動神経線維とつながる(シナプス)ため、筋肉を強く収縮させることができます。
膝のお皿の下をたたいて足がとびはねる現象を一度は経験したことがあると思いますが、この「膝蓋腱反射」も筋紡錘を介した防御反射です。膝蓋腱反射では、大腿四頭筋の腱をたたくことにより、筋が伸張され、これ以上伸びたら切れてしまう!と筋紡錘が感知して反射的に筋肉を収縮させます。この機能がないとヒトは肉離れを常に起こすようになります。
筋の中にあるセンサーを筋紡錘と呼ぶのに対して、腱の中にあるセンサーを腱紡錘と呼びます。腱紡錘からの信号は、直接運動神経線維には届かずに、抑制介在神経線維を経由します。つまり腱紡錘からの信号は筋の収縮を緩めるように働きます。
この腱紡錘からの抑制はリハビリ実践の場面でも応用することが多いです。筋緊張が強い方などはこの抑制を利用して筋の緊張を落としていきます。PNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation:固有受容性神経筋促通法)やPIRストレッチ(Post Isometric Relaxation:等尺性収縮後筋弛緩)では、筋肉を収縮させたのちの抑制下でアプローチすることにより、筋の伸張や筋緊張の抑制を促すことができます。
筋紡錘・腱紡錘のメカニズムは過度の負荷を防ぎ、筋を障害から保護する役割を持っています。中枢疾患や整形外科疾患で異常が見られると、このメカニズムが過剰になったり、消失することは、しばしば観察されます。
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