こんにちは。塩出です。今回のテーマは「天気痛」です。6月になり梅雨の季節になりましたが、季節特有の「天気痛」を経験されている方も少なくないのではと思います。慢性的な痛みを抱えている方や、手術経験がある方など、雨の日の前日に痛みが増し、「明日は雨かな」と考える方や、自分の肩や膝が「天気予報」という方もおられます。実際に天気と痛みはどのような関係があるのでしょう。

天気痛有訴者を人工的に低気圧環境に曝露させる再現実験では、日常生活レベルの気圧変化で症状が再現され、ラットの研究によると、気圧の低下や低温下では慢性痛モデルラットの疼痛行動や抑うつ行動は増強することが報告されています。

ラットの内耳を破壊したモデルでは気圧変化の効果が消失し、内耳感覚支配の前庭神経細胞の25%で低気圧により放電数が増加したことが明らかになりました。内耳には気圧の変化を感知するセンサーが備わっている可能性が高く、人間にも同様のメカニズムがあり、このメカニズムの感受性を制御することで「天気痛」の予防治療が可能になる可能性を示唆しています。

ヒトを対象にした臨床実験では、天気痛有訴者は天気の影響を受けない慢性痛有訴者や健康な被検者に比べて、弱い内耳刺激でめまい感覚を誘発することが明らかになっています。天気痛有訴者は健康な被検者に比べて、感受性が高くなっていることも考えられます。つまり天気痛有訴者は健康な被検者に比べて、内耳前庭が気圧の変化に対して鋭敏なため、少しの気象変化がセンサーを刺激して、症状の誘発をしている可能性があります。

天気痛を誘発しない慢性痛患者を対象に同じ実験をしたところ、内耳の感受性に有意差はなかったため、慢性痛患者全員が内耳の感受性が高いわけではないことが明らかになりました。

また天気痛有訴者ではめまい感を感じたタイミングで副交感神経が優位になっており、健康な被検者では交感神経が優位になっていることから内耳に対する自律神経反応が健康な被検者と全く異なっていることがわかりました。

自律神経が慢性痛と関係していることはこれまでの多くの研究で明らかになっていることから、天気痛有訴者で見られた特異的な反応が天気痛のメカニズムにも関与している可能性が示唆されます。

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