こんにちは、塩出です。今回のテーマは技能と適応についてです。

ヒトの機能を高めていく上で、技能と適応は重要です。我々は多くの外的な影響を受けながら生活しています。スポーツの場面ではさらに多くの外的な要因にさらされながら、動作を行うことになります。このような状況下でパフォーマンスを発揮できる状態が、今回の機能を考えるうえで大切になります。

技能(skill)

技能は「最小限の労力と時間の中で環境下の目的を達成できる能力」のこととされています。

例えば、自転車に乗る練習だと、最初は滑ったり、こけたりしながらも反復練習を重ねていくと、安定して乗れるようになります。

さらに慣れてくると、姿勢よく少ない力で効率よく漕げるようになります。筋力トレーニングで例えると、ベンチプレスやスクワットの動きも最初はバランスをとりながら動作を遂行することで精いっぱいですが、トレーニングを重ねていくと安定して動作を行えるようになり、俗にいう「効かせる」ことが可能になったり、より負担が少ないフォームを学習していきます。

このようにして技能は高くなっていきます。技能が高い状態は、筋活動パターンの獲得により、運動速度が低下せずに、エラーも少なく、パフォーマンスを発揮できる状態とされています。

適応(adaptation)

適応は「条件が変わった中でエラーを少なくすること」です。

この条件は内的要因と外的要因に分けることができ、内的要因は筋疲労、睡眠状態、心理的な問題などがあげられます。外的要因は天候、路面状態、外部の環境などがあげられます。

適応では、技能の獲得とは違い、筋活動パターンの獲得ではなく、学習された運動を外的要因の中や、空間的目標の間に新しいマッピング(対応)を獲得することです。

トレーニングやリハビリテーションでは技能と適応の両方が合わさることにより、学習が向上していきます。

例えば、先ほどの自転車に乗る練習だと、「乗って漕ぐ」という動作の反復では技能学習となりますが、適応学習では、「人ごみの中を漕ぐ」「路面の石をよけて漕ぐ」などの環境に対するパフォーマンスの適応が求められます。

SNS上でよく、筋トレ愛好家に対して「それは使える筋肉なのか?」などと意見を述べている筋肉論者を見かけることがあります。筋トレ愛好家がベンチプレスをやりこむことは、大胸筋や肩周囲筋の筋肥大や筋力向上、筋活動パターンを獲得でき、たくましい上半身にすることができます。つまり「技能」が高い状態です。たくましい上半身を目的にベンチプレスを実施し、「技能」が高くなった結果、目的が達成されているならば、それは素晴らしいことです。

そのトレーニングを野球にサッカーにゴルフに適応していくことを考えれば、当然ですが「適応学習」が重要だと個人的には考えています。これが外的要因や環境的な変化の中でも「使える」機能を獲得していくということだと感じています。

つまり日常生活動作の獲得などでもそうですが、「技能」「適応」の両方を考慮しながら、アセスメントやプランニングをする必要があります。膝が痛いから大腿四頭筋を鍛えるのはいいことですが、階段を降りるとき、砂利道やデコボコ道を歩くとき、その状態に「適応」できているかを常に考える必要があります。

関連記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP