こんにちは。塩出です。今回のテーマは「扁平足と膝痛」です。
ヒトは直立二足歩行のため、地面と接触してるのは足部だけです。そのため、足部の形が変化すると、それに伴い様々な機能障害が発生することが分かっています。その一例が、扁平足障害です。扁平足は多くの病態と機能解剖学的に関わってきますが、その中でも今回は膝に焦点をあてていきます。
足部の役割は多くありますが、代表的な働きは
- 可動的機能(movable function)
- 衝撃吸収作用(shock absorber function)
- 情報伝達機能(mechanoreceptors)
などがあげられます。
そのため足部では、荷重下において、剛性力と柔軟性と相反する2つの機能が必要になります。
扁平足では、踵骨(かかとの骨)と距骨(すねの骨とのクッションになる骨)の位置関係がズレていきます。距骨と踵骨は本来上下に積み重なる積み木の関係ですが、扁平足では、上下の積み木が内側に滑ってしまい、横並びになるようなアライメントになってしまいます。
ただ、これは健常者のバイオメカニクスでも起こります。健常者では、内側アーチが下降すると距骨の下を走行する底側踵舟靭帯が静的支持として働き、さらに後脛骨筋が動的支持として働くため、過度の落ち込みを支持しますが、扁平足患者では後脛骨筋の機能低下を起こしていることが多いため、動的支持が破綻します。
内側縦アーチの柔軟性は足部の衝撃吸収作用(shock absorber function)にも関わるため、機能低下により、足部で緩衝できなくなると、上位関節である膝に負担がかかります。
変形性膝関節症患者の足部は立位、歩行時に外転位(つま先が外に向く)を呈していることが多いとされています。
足部の外転位は内側縦アーチの機能を低下させ扁平足を助長します。Anginによると偏平足患者の母趾外転筋、短母趾屈筋、腓骨筋の筋断面積は健常者と比較して有意に小さいと報告され、機能低下を示唆しています。
変形性膝関節患者では、外観上、脛骨の過外旋を呈していることが多いですが、足関節・股関節と隣接関節との相互関係では、股関節が過外旋しており、膝関節は足部偏平足から運動連鎖的に内旋しているケースもあり、このような場合、関節内靭帯である前十字靭帯(anterior cruciate ligament:ACL)と後十字靭帯(posterior cruciate ligament:PCL)が過緊張するため、関節内に変形性変化(骨棘形成)が発生しやすくなります。
このように扁平足は足部のみ障害にとどまらず、上位関節の膝関節にも大きな影響を及ぼします。足部の運動は決まった動きではなく症状や動作により、運動が異なるため、「これをすればいい!」というものはなく、足部や膝に限ったことではないですが、動作評価、関節動態の評価を用いて個別のアプローチが必要ではないかと個人的には考察しています。
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