こんにちは。塩出です。
今回のテーマは「変形性股関節症」です。変形性股関節は現在、潜在的な有病者を含めると500万人以上いると言われており、整形外科領域の股関節疾患では、非常に多い疾患です。
変形性股関節症(股関節OA)について
変形性股関節症は、関節軟骨が退行性変化により摩擦や滑走不全による関節破壊に伴い、骨棘と言われる骨のトゲをつくり(骨増殖性変化)徐々に関節が変形し、痛みを伴うこともある疾患です。
変形性股関節症は発育性股関節脱臼(DDH)や臼蓋形成不全などの先天的異常や後天的に続発した二次性変形性股関節症と、原因不明の一次性変形性股関節症に分けられます。
日本ではほとんどが二次性とされ、臼蓋形成不全がその原因として多いと考えられています。
一次性変形性股関節症 | 二次性変形性股関節症 |
原因不明 | 退行性変性・発育性股関節脱臼(DDH)・臼蓋形成不全 |
臼蓋形成不全
臼蓋形成不全とは、簡単に言うと大腿骨の蓋をする臼蓋と呼ばれる部分が、深く被覆していない状態(かぶっていない)で、関節が骨性に不安定な状態です。
これにより、荷重が関節の一点に集中しやすくなり、負荷が増大します。負荷が増大すると骨硬化や骨棘形成がみられ、大腿骨頭と臼蓋が変形していきます。
臼蓋形成不全が股関節痛の訴因にある患者は、被覆量が少ないことから、大腿骨頭の前上方に負荷が集中して、痛みにつながりやすいとされています。
変形性股関節症の病期は、単純X線初見から前股関節症・初期股関節症・進行期股関節症・末期股関節症の4期に分類されます。
分類基準は関節裂隙(関節のスキマ)、骨構造の変化、臼蓋・骨頭の変化で分類されます。
この中でも重要なのが、関節裂隙がどうなっているかです。病期が進行するにしたがって分類基準が変化していきます。
前股関節症 | 初期股関節症 | 進行期股関節症 | 末期股関節症 |
関節裂隙の狭小化は見られない | 関節裂隙の狭小化を認める | 一部が軟骨下骨と接触している | 広範囲で関節裂隙が消失している |
変形性股関節症に対する運動療法
変形性股関節症は原則、保存療法とされており、年代関係なく治療の第一選択をして推奨されています。
変形性股関節症の運動療法システマティックレビューによると、短期的には症状の改善に有効だが、長期的に病期進行に対する予防効果はまだエビデンスがないとされています。
Felsonらは、変形性股関節症を悪化させる要因であるメカニカルストレスとして臼蓋と大腿骨頭とに生じる接触応力(contact force)を挙げています。
つまり、運動療法で重要になることは、接触応力を適正化することにより、関節に対するメカニカルストレスの是正となります。
変形性股関節症患者では、健常者に比べて、歩行周期全般で殿筋の筋活動が大きいとされており、これらは接触応力を高めてしまう原因となってしまいます。
運動療法では
- 骨盤前傾により骨頭の被覆量をふやす
- 股関節周囲筋の柔軟性を獲得すること
上記により、関節の安定性を確保することが基本的な考え方になるとされています。
股関節の安定化に重要となる筋肉
梨状筋
梨状筋は股関節の深層にあり、梨状筋の硬さは大腿骨を前方に押し出すことになり、前方部の痛みの原因になります
外閉鎖筋
外閉鎖筋も股関節の深層にあり、股関節の安定化に寄与します。
solomonらによると、股関節内転・内旋時の伸長度は梨状筋や内閉鎖筋よりも外閉鎖筋が大きいと報告しています。
すなわち、外閉鎖筋の柔軟性が低下すると、大腿骨頸部を巻き込むように付着している構造上、大腿骨を前方に引き上げてしまい、痛みの原因となります。
中殿筋・小殿筋
中殿筋は歩行や片脚立位の時に、遊脚側(足が浮いている側)の骨盤が下がらないように支える働きがあります。
小殿筋は中殿筋の深層にある筋肉ですが、中殿筋よりもより関節に骨頭を引き付ける役割が大きいとされており、近年、股関節の安定化を考えるうえで重要とされています。
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