こんにちは。塩出です。

今回のテーマは「円背姿勢と歩行」についてです。円背姿勢とは、高齢者に多くに受けられる背骨が大きく後ろに湾曲している状態で、機能解剖学的には脊柱後弯姿勢と言われます。背中が丸い姿勢は一般には悪いと言われますが、高齢者においてはどうでしょう。

円背姿勢(humpback posture)

脊柱の中でも胸椎が加齢とともに後弯していきます。胸椎の後弯が大きくなると、脊柱のバランスをとるために、頸椎の前弯が大きくなり、腰椎の前弯は消失していきます。

この一連の加齢性変化で体幹が前屈位となり、重心が大きく前方移動するため、骨盤を後傾させることで、重心位置をコントロールしています。

胸椎の後弯が大きくなり、体幹の前傾が大きくなると、膝関節を曲げることでバランスを保とうとしますが、膝関節の代償は30°が限度とされている為、まっすぐ立つことが難しくなり、膝に手をつく必要があるため、杖などの歩行補助具が必要になります。

本来、正常の立位姿勢では、筋肉の活動はほとんど起こらないとされています。しかし円背姿勢では、抗重力位を保つために大殿筋や腸腰筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋の筋活動が大きくなります。

仲田らは、高齢者の姿勢を伸展型、S字型、屈曲型、手膝上型の4つに分類しています。

峯らはこの分類を用いて、努力伸展時の歩行への影響を検討しました。それによると、円背姿勢による屈曲型(通常の円背姿勢)は、重心が前方移動するため、大殿筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋の筋活動が高くなるとし、努力伸展時(頑張って伸ばした姿勢)では体幹は伸展するが、骨盤後傾と膝関節屈曲の増大の代償が大きくなるとしています。重心を後方に移動することにより、大殿筋の筋活動は少なくなりますが、大腿四頭筋や下腿三頭筋の負担が大きくなることを、峯らは報告しています。

円背姿勢における運動療法の実際

つまり、円背姿勢の場合、体幹の安定性を大殿筋が担うことになります。股関節伸展筋の過活動状態の立位姿勢は、股関節を後ろに蹴りだす力をうまく出力できない原因になり、推進力を得られにくい歩行様式になります。

そのため、円背が大きい高齢者には、杖などの歩行補助具を使用することで、股関節伸展筋への負担を少なくできるのに加え、長距離の移動で体幹の重さを支えることを可能にします。

円背姿勢は病態ではなく、時間とともに進行して、代償された経時的変化です、そのため、無理に補助具を外した歩行訓練や、いい姿勢を意識させた運動療法・トレーニングは身体の負担や、転倒の恐怖心から運動恐怖感(キネシオフォビア)を与えて、安全性が低い状態になってしまうことが考えられます。そのため、正しい歩行評価をし、場合によっては補助具を使うことが、運動効率を考えた上では重要としています。

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