こんにちは。塩出です。

今回のテーマは「関節拘縮」です。変形性膝関節症で膝が伸びない、曲がらない、五十肩で知られる肩関節周囲炎などは拘縮を起因とすることがあります。なぜ拘縮は起こってしまうのでしょうか。


関節拘縮とは

関節拘縮は、関節をつくる軟部組織が原因で起こる運動制限で、炎症をきっかけに起こることが多いとされています。


痛みや麻痺、手術後の固定など動かさない期間が続くと、関節包、靭帯、筋、筋膜、皮膚などの組織が伸びにくくなり、拘縮になります。手術後の拘縮は手術の侵襲に伴う、組織損傷で滑膜や関節包の癒着や線維化が起こり、生じるとされています。


動かさない期間が長くなるほど、関節の運動制限は進行していきます。ラットを用いた関節の運動制限に対する組織の関与率を求めた報告によると、骨格筋が43%と最も高く、拘縮の原因として一番に考えられるとされています。


さらに岡本らはラットの足関節を曲げた状態でギプス固定した研究により、1ヵ月程度の固定では筋に由来した制限が優位になるとしていますが、2~3か月の固定では関節をつくる軟部組織由来の拘縮が強くなると報告しています。


八百板らは固定を外した後の回復に関する実験で30日以内の固定では、軟部組織や可動域は正常に回復するのに対して、40日以上の固定では軟部組織の回復は遅くなるとしており、さらに60日以上の固定では関節内の癒着が残存し、関節軟骨の崩壊は回復せず、可動域の回復はさらに難しくなるとしています。


拘縮がどうやって起こるのか

安藤は、諸家の報告をもとに、拘縮の発生機序についてまとめました。動かなくなったことにより循環障害が起きます。これにより滑膜組織の血管がうっ血して、関節の周りが浮腫(むくみ)ます。これにより結合組織の増殖と関節腔の狭小が起きます。これにより関節内圧は上昇して関節液の吸収の遅延につながり、関節の癒着がすすみ、動かなくなります。


一方、沖田らの研究によると、筋肉を伸ばした固定では筋の短縮は起きなかったとしているため、筋肉を伸張させることは廃用性障害や筋肉の短縮を防ぐ上では重要と報告しています。


拘縮は浮腫(むくみ)成分のうち、フィブリンが組織に沈着することで起こる線維化と、修復過程で生じる組織間の癒着の要素で起きるとされ、線維化は外傷や手術侵襲が行われて、すぐ始まりますが、癒着は組織が修復に入って、2週間前後経ってから始まるとされています。そのため、拘縮の予防には徹底した、浮腫(むくみ)の管理と、関節運動を早期に実施して、組織間の滑走や伸張負荷を与えることが重要とされています。

 

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