こんにちは。塩出です。

今回のテーマは「仙腸関節」です。


仙腸関節の基礎

仙腸関節は文字通り、脊柱下部の仙骨と骨盤の腸骨を連結した関節で、可動域は極めて少ないですが、関節周囲の受容器の9割以上が侵害受容器とされており、疼痛に敏感な組織です。


そのため、しばしば腰痛の原因となることが多い関節です。また他領域に神経支配が多くあり、仙腸関節の痛みは、臀部や鼠径部、下腹部などに放散するため、治療に難渋する原因の一つと考えられます。


解剖学的には滑膜関節ですが、仙骨側は硝子軟骨、腸骨側では線維軟骨を豊富に含んでいます。関節面は尾側が大きく不整であることから、摩擦係数が他関節より高いことが特徴です。


また、靭帯の付着が多く、仙腸関節靭帯長短後仙腸靭帯骨間仙腸靭帯など高密度の靭帯が連結することにより、安定性に富んでいます。


Fortin JD, Aprill CN, Ponthieux B, et al:Sacroiliac joint:pain referral maps upon applying a new injection/arthrography technique. Part II:clinical evaluation. Spine (Phila Pa 1976) 19:1483-1489, 1994

村上栄一,国分正一,田中靖久:仙腸関節性疼痛の発痛源と臨床的特徴.関節外科18:513-519,1999


バイオメカニクス

脊柱を下支えする仙骨部は荷重伝播機能があり、仙腸関節は体幹部の重量と床反力部の剪断力が加わることになります。そのため安定しなくなると仙腸関節の機能は破綻していきます。

基本的な仙腸関節の動きはニューテーションカウンターニューテーションの2種類であり、仙骨のうなずき運動と逆うなずき運動と呼ばれています。腸骨に対して仙骨が前傾することをニューテーション、腸骨に対して仙骨が後傾することをカウンターニューテーションと言います。ここで注意する点は、高齢者など脊柱全体が後傾しているケースでは、仙腸関節の動きは相対的に変化するという点です。


仙腸関節安定化メカニズム

Vleemingらは仙腸関節安定化メカニズムをフォームクロージャー(form closure)とフォースクロージャー(force closure)で紹介しています。

フォームクロージャーは静的安定化機構とし、靭帯性の安定化メカニズムを指します。

フォースクロージャーは動的安定化機構とし、骨格筋により安定化メカニズムを指します。


Vleeming A, Stoeckart R, Volkers AC, et al:Relation between form and function in the sacroiliac joint. Part I:Clinicalanatomical aspects. Spine (Phila Pa 1976) 15:130-132, 1990


動的安定化機構では広背筋、大殿筋、胸腰筋膜の収縮を介して、仙腸関節に圧縮力をかけることにより、安定します。広背筋と大殿筋は荷重伝播機能として最も重要な骨格筋です。


脊柱起立筋は仙骨をニューテーション方向へ引っ張る機能があるためこれにより、仙腸関節が締りのポジションになりロックがかかります。


腹横筋の安定化機構

腹横筋は肋骨から腸骨、鼠径部まで大きく起始停止をもち、仙腸関節・骨盤帯を安定させるのに大きく貢献します。収縮することにより仙腸関節に圧縮力がかかり、骨盤帯の剛性力が向上します。また骨間靭帯を経由するため、腹横筋の収縮は静的安定化機構と合わせて強く仙腸関節を安定させることができます。

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