こんにちは。塩出です
今回のテーマは「変形性関節症と組織低酸素化について」です。変形性関節症は主に膝関節、股関節、脊椎における病態ですが、変形性関節症が起きるとHIF-1α(低酸素誘導因子)の発現が上昇して、滑膜内の血管内皮細胞の機能を低下させるという研究結果が出ています。(Giatromanolaki A et al.Upregulated hypoxia inducible factor-1α and-2α.pathway in rheumatoid arthritis and osteoarthritis Arthritis Res Ther 2003;5 R193)
低酸素誘導因子(ていさんそゆうどういんし、英:Hypoxia Inducible Factor、HIF)とは細胞に対する酸素供給が不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質であり、転写因子として機能する。癌の病巣においては栄養不足や細胞外pHの低下、血流不足による酸素供給不足(低酸素)状態が認められるが、癌細胞が生き延びるためには新たに血管網を形成することにより病巣への血流を増加し、低酸素状態を脱する必要がある(血流の増加は転移経路の確保にもつながっている)。そのための機能を担うべく低酸素条件下において誘導される転写因子がHIFであり、種々の遺伝子の転写を亢進させる。(wikipedia)
このHIF-1αは2019年にノーベル生理医学賞を受賞した研究でも発表されており、近年整形外科リハビリテーション業界では注目されている因子です。
変形性関節症の関節軟骨と関節液内ではHIF-1αは発現量が増加しており、HIF-1αの発現量と疾患の程度は相関関係があることが分かっています。
HIF-1αの増加に伴い組織内の血管機能が低下すると、酸素供給能が低下し、組織の線維化や癒着が進行すると言われています。
線維化というのはヒトの生体反応としては正しいものですが、修復過程が長くなればなるほど、瘢痕化して癒着を起こします。そして本来独立している組織間が癒着してしまうと治療に長い期間を要します。
変形性膝関節症において、膝蓋下脂肪体の線維化がおきることは周知の事実ですが、膝蓋下脂肪体への力学的刺激は膝蓋下脂肪体の低酸素化による線維化を予防する可能性があるとされているため、早期から拘縮や変形を進行させないリハビリテーション管理が必要としています。
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