膝の変形性関節症(Knee Osteoarthritis, OA)は、世界的にみても障害の主な原因の一つです。股関節外転筋(Hip Abductor)は、体のバランスを保ち、移動や荷重活動時に重要な役割を果たします。この筋力が低下すると、下肢全体の力の発揮能力が低下し、膝関節、特に内側脛骨大腿関節(Medial Tibiofemoral Joint)に過剰なストレスがかかる可能性があります。本研究は、膝OA患者における股関節外転筋強化が、膝関節への荷重、膝痛、機能的な成果にどのような影響を与えるかを評価することを目的とした系統的レビューとメタアナリシスです。
対象とした研究は、膝関節への荷重、膝痛、機能的アウトカムへの影響を評価したもので、2020年12月までに発表された英語論文に限定しました。データ解析にはRevMan 5.4を使用し、PEDroスケールを用いて研究の質を評価しました。
結果と考察
検索の結果、260件の論文が見つかり、そのうち29件の全文をスクリーニングしました。その中で、7件のランダム化比較試験がレビューに含まれ、うち3件がメタアナリシスの対象となる高い方法論的品質を備えていました。
メタアナリシスの結果:
- 膝痛の軽減
視覚アナログスケール(VAS)スコアが有意に減少しました(標準化平均差 [SMD] = -0.60 [-0.88, -0.33], p < 0.0001, 95%信頼区間)。 - 機能的改善
WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)スコアが有意に改善しました(SMD = -0.75 [-1.05, -0.45], p < 0.0001, 95%信頼区間)。
全ての研究が、股関節外転筋の強化が膝痛を軽減し、機能的アウトカムを向上させるというポジティブな影響を示していました。
考察と補足
股関節外転筋は、膝関節の安定性に重要な役割を果たします。
この筋群を強化することで、膝OA患者の疼痛軽減や機能改善につながる理由として以下が挙げられます。
- 荷重分散の改善
股関節外転筋を強化することで、膝関節の内側への過剰な荷重を軽減し、関節の圧力を分散することが可能です。 - 動作の効率化
股関節の安定性が向上することで、歩行や移動時のエネルギー効率が改善し、膝への負担が軽減します。 - 筋力バランスの修正
下肢全体の筋力バランスが整うことで、膝関節への負担を減らすと同時に、患者の動作能力が向上します。
膝OA患者に対するリハビリテーション治療として、股関節外転筋強化運動が有効であるという高品質のエビデンスを示しました。
膝OAの管理において、股関節外転筋の強化を含む包括的な運動療法が推奨されます。
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