橈・尺両骨骨幹部骨折はそれぞれの単独骨折の場合よりも治療が困難であり、治療日数も長期を要するために小児骨折を除き成人では合併症を伴いやすく、観血療法も含め適切な治療が必要になってきます。

転移高度なものの難治の理由としては
(1)2本の骨の骨片転移を同時に、しかも解剖学的に整復することが極めて困難です。
(2)解剖学的整復位が得られたとしても、筋力による末梢骨片の回内転移とともに両骨折端が接近しやすく再転移の可能性が大きくなります。
(3)再転移を防ぐため緊縛気味な包帯による固定が必要となり、これは末梢部の循環障害の危険や患者さんの苦痛を招くものであります。
(4)骨癒合の遷延や偽関節形成の可能性が高いです。
(5)稀に両骨間に橋状(架橋)仮骨を作り、前腕回旋障害をもたらすことがあります。
(6)両骨の骨癒合に長期を要し、長期固定による上肢の関節可動域制限を残す可能性が大きいです。

発生機序と転移

発生機序としては、直逹外力と、介逹外力とに分けられます。
直達外力
直接前腕部に打撃を受けた場合は、横骨折で骨折線はおおむね橈・尺両骨が同じ高さで折れているものが多いです。

介達外力
手掌を地面に衝いた際の両骨長軸に作用する外力により発生し、斜骨折になりやすく、橈・尺両骨骨幹部骨折は橈骨が近位になるものが多いです。

骨折線は種々のものがあり、斜骨折のみならず、横骨折・らせん状骨折・第3骨片を伴う場合もあり、幼少児の場合は若木骨折もしばしば見られます。

転移
幼少児の場合は遠位部での骨折が多く、上1/3・中1/3の骨折もありますが、多くは不全骨折で骨折部は屈折して角状を呈し、短縮転移または側方転移を見ることは少ないです。
青壮年の場合は転移の大きなものが多いです。
尺骨の転移がない、または軽度で、前腕回旋の軸としての機能が残存する場合は、筋力の作用によって定型的な骨片転移を呈します。
ただし外力が強大で特に直達外力の場合は定型的転移を示しません。

定型的骨片転移
円回内筋付着部より近位の骨折
近位骨片は回外筋及び上腕二頭筋の作用により回外し、さらに外転かつ屈曲し、遠位骨片は円回内筋、方形回内筋により回内する。
円回内筋付着部より遠位
近位骨片は付着する回外筋・上腕二頭筋と円回内筋との作用が拮抗、回内回外中間位をとり、遠位骨片は方形回内筋により回内します。

症状と治療

症状としては、一般に橈・尺両骨骨折の場合は、単独骨折よりも症状は著名です。
種々の転移による骨折部変形を見る(前腕部の屈曲・短縮・回旋など)転移が大きい時は開放性骨折となることもあります。
前腕部の著名な腫脹があり、自発痛・圧痛・運動痛が著名で、骨折の固有症状の異常可動性・軋轢音があり、前腕部の機能停止とくに回旋不能。

固定法としては、肘関節直角屈曲位にし、円回内筋付着部より近位部の骨折では、前腕回外位、円回内筋付着部より遠位または、転位のない骨折は前腕回内回外中間位にします。
骨折部の凸変形のあった位置に再転位を防止するために局所副子を当て、さらに、掌背側に局所副子を当て、上腕中央からMP関節の手前まで金属副子などで固定します。

後療法として、両骨間の狭小化や捻転転位や短縮転位を残すと遷延治癒、偽関節、前腕回内・回外の運動制限を起こしやすいです。
とくに2〜3週間は前腕の回内回外や肘関節屈曲の固定肢位に留意し、再転位に注意します。
肘関節、手関節の自動運動開始時期は、骨折型・部位・年齢などにより異なるが、4〜6週間後を目安とします。
ただし、前腕回内回外運動は骨癒合がさらに進行した時期でなければ再転位や偽関節などの原因となるので慎重に進めます。

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